星空に触れて-93-

どうしてだろう・・・
野崎が、膝を抱えて小さくなっているような気がする。
抱きしめてやらなければ、いまにも消えてしまいそうな気がする。

『・・・・・・どこに、居るんですか?』
どきどきする・・・
鼓動が早くて、胸が苦しい。
『聡示さん・・・、今、どこに居るんですか?』

野崎が来れないのなら ───

 『・・・オフィスに居る』
 僕が、行ってしまえばいい
 『僕が・・・僕が今から、行きます』
 逢いにいける方が、逢いに行けばいい
 『・・・上総?』
 『待っていてください。僕が、行きますから・・・待ってて』

心を決めて、上総は通話ボタンを切った。

そして勢いよく飛び起きると急いで服を着替えた。
財布と携帯と鍵を持って、はやる気持ちを抑えながら、音を立てないように玄関を出る。

今ならまだ電車が走ってる。
帰る電車は無いけれど、そんなことはどうでもいいっ!

地下鉄のホームまで、全力で休まないで走る!

聡示さんっ!聡示さんっ!

息が上がって壁にぶつかりそうになりながら、止まっていた電車に飛び乗った。
オフィスがある駅まで2つ行って乗り換えて3つ。
椅子に雪崩込むように座ると、上総は息を整えた。
ドアが閉まり、電車が走り出す。
僅かな時間、上総はうる覚えの道順を記憶の底から引っ張り出した。

確か、一度大きな角を曲がって脇に入った気がする。
脇に入ってビルをいくつか過ぎて───。

そうこうしているうちに乗り換えの駅について、上総は電車を飛び降りた。
隣のホームまで階段を駆け上って、駆け下りる。

早く!早くっ!

そのまま勢いを殺さずに、柱にぶつかりながら閉まるドアに滑り込んだ。
息が上がって、咳が出て、喉も胸も苦しくてたまらない。
少し背をかがめて、一生懸命息を吐いて、何とか空気を吸い込んだ。

僕が、こんなことするなんて。

こんなに全力で走ったのはいつぶりだろう。
力任せに足を動かして、無我夢中で電車を乗りついだ。

そうさせているのは───、

聡示さん、聡示さんっ
もっと早く、こうしていれば良かった───。


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