星空に触れて-91-

『─── もしもし?』

何日かぶりに聞くその声・・・。
野崎の声は羽毛のように柔らかくて、耳に心地が良かった。

『もしもし?上総・・・?』

名前を呼ばれるのは二回目。
今日はとても悲しそうに聞こえる。

『上総?』

それでもその声は労わりに満ちていて、
まるで、すぐ目の前に野崎の優しい手が差し伸べられているように感じてしまう。

返事が、できない・・・。

『話を、してくれないの・・・?』

どうしてそんな声・・・。

今度は、まるで野崎が隣に座っていて、
こちらの表情をなんとか確かめようと、背をかがめて顔を覗き込んでいるような感じがした。

『上総・・・』

名前を呼んだ後で、ふぅっと息を吐くのが聞こえる。
すっきりと整った野崎の表情が少しだけ険しくなって、眉が寄せられている様子が目に浮かぶ。

『お願いだから、上総・・・』

少しだけ強く発せられた声は、あの時、初めての二人きりの車の中で、
野崎から逃げようとしていた手のひらを くるめ捕られた時の強さを思い出させた。

『聞いてるんだろう?』

聞こえてる、聞こえてるけど・・・。
あまりに近くに野崎を感じている自分が怖くて、上総は一言も声が出せなかった。

『上総、返事して・・・。声、聞きたい』

そんな・・・、泣きそうに言わないで・・・。

『返事して・・・、上総』

泣いてないよね・・・?

『・・・あ、の・・・』

これまでのことを何もかも問い詰めるつもりだったのに、
まるで野崎の声に染まったように、上総の声も弱々しくなってしまっていた。


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