星空に触れて-8-

「スッ・・・スーパーマン、ですかっ」
いきなり目の前に飛び出てきた指に驚いて、あわてた上総が腰を引いて椅子からずり落ちそうになる。
「っと、危ない」
黒田がタイミングよく上総の腕を取って、無事椅子の上に戻された。

「ほらほら、そんなに勢い込んだら槙村君が驚いちゃいますよ」
ポールさんが気色ばったハンチングさんを宥めながら続ける。

「三十代半ば、といったところでしょうな。キリリと背筋の伸びたお客人が居て、大騒ぎしていたその子らを、店の外に連れ出したんですよ。ほら、コナを飲んでいた人を、覚えていませんか?」

「コナ・・・。三十代でキリリ・・・。コナ・・・、あっ!もしかして、いつも左の窓際に座っていた人じゃないですか?」
上総はたった一人だけ思い当たる人物を思い出し、黒田のほうをすぐに振り返った。
ほかに当てはまる人など居ないという確信を持って、黒田を見上げる。

「おう、思い出したかい」
黒田は目元を緩めて口角を上げると、上総に『正解だ』と視線で応える。
上総は自分の予想が当たったことと、そのスーパーマンと称された正義の味方が彼であったことが同時に嬉しくて、黒田に向かって無邪気な笑顔を返す。

「窓際の人ってだけで通じ合うのかい、ご両人。いやー、お二人さん夫婦みたいだね」
大げさに驚いてみせて、ハンチングさんが茶々を入れる。

確かに、いつごろからか上総と黒田の間では、不思議とこういった意思疎通ができるようになっていた。
細かい事を告げなくても相手の意図を理解して、同じことを考えることができる。
それと同じように、相手に伝わっていない時にも敏感で、間違っているとすぐに訂正されるのだが。

「それは恐れ入りましたね。でもどうやら、槙村君は正解のようですよ」
ポールさんが黒田と上総を交互に見やって、満足そうに微笑む。

「ありがたいことに、学生らの代金をちゃんと徴収してきて、自分の分と一緒に払って帰って行ったのさ」
その人がいつも座っていた窓際に目を向けて、黒田が独り言のように言う。

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