星空に触れて-74-

「君は、本当にひたむきに誠実に向き合っていた。だからきっと、
この部屋に隠れていた星の妖精たちが君に応えてくれたんだよ」

教授はこういうメルヘンチックな言葉が、本当に似合う。
全体的に丸いその風貌に、嫌味はまったく感じない。

「じゃぁ僕、妖精さんにしかられてしまいますよね」
上総は曖昧に笑って答えた。

「君をどこへ推薦しようか、私はわくわくしながら考えていたよ、本当に。私を手伝ってもらおうかとも・・・」

その言葉だけで救われる。
自分がやってきたことを見ていた人がいるなら、全部なくなってしまうわけじゃない。

「これから教務課へ行こうと思います」
暗に、手続きをすることを告げる。
もうここへは来ないかもしれない。

「そうだ。槙村君は6月22日生まれのかに座だったね」

ふと思い出したように教授が言う。

「はい・・・、そうです」
「おお。ちょうど来週の金曜日だ」
教授はカレンダーをぱらぱらと捲った。

そうだ、誕生日だったのに。
忘れてた・・・。

ふと野崎との約束を思い出して、キリリと胸が痛んだ。

「教務課へ行くのは再来週にしてはどうだろう」
教授がソファーの肘掛けをぽんと叩いて提案する。

「どうしてですか?」

「せっかく誕生日が近いんだ。せめて22歳になってからにしてはどうかな。
通常でも就職活動は在学中にするものだし、採用が決定してからでも遅すぎることはない」

「ですが・・・」
普通ならそうかもしれないけれど・・・。
自分にはもう卒業見込みが無い。

「問題があるのかい?」
「いえ、問題というか・・・」
それだとただ単に、先延ばしにしているだけのような気がする。

「では、そうしてはどうだろう。それで、それまではいつものようにここへやってきて勉強をするんだ、いいね?」

いつになく押しの強い教授に、上総は渋々了承した。

「分かりました。じゃぁ・・・採用が決まるまで、よろしくお願いします」

「少なくとも前期はまだ残っているんだから。それに、事を急くのは槙村君らしくない」
そういうと、教授はにっこり笑った。

上総はていねいに礼を言って、研究室を後にした。


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