星空に触れて-69-

「彼氏と時田が同僚だって分かって、あんなにパニくったのか・・・」
目線を宙に遣ったままで真島が静かに言った。
上総とのやり取りをどこから見ていたのか気にはなるものの、今はもっと重要なことがある。

「・・・落とし前はきっちり付ける」
野崎は宙を見る目をギラリとさせる。
「急ぐなよ、まだ証拠が足りない」
同じように鋭い目をさせながら、真島は煙を吐き出した。
「時間がない。上総は大学を辞めるつもりでいる」
「まさかっ、あの子も、そうなのか?」
真島は慌ててソファーから背を浮かせて、身体ごと野崎に向き直る。
「上総が大学を辞める理由は他に考えられない。昨日の今日で言い出したところを見ても、まず間違いない」

今にも泣き出しそうな顔をして模型を見つめていた。
震える肩は頼りなくて、それを精一杯の強がりで隠していた。

あの模型を見て、どんな可愛い顔で喜ぶ笑顔を見せてくれるか楽しみだったというのに。
自分の知らないところで、上総はひとり・・・ 心を痛めていた。

「単に土地を買い取る話なら、住んでる側の言い分もいくらかは通せる」
あれだけの大規模な土地をそろえるには、十分な資金と移転先を用意してから話を進めるのが常套だ。
「折り合いが付けば、引っ越して終わりだ。あと半年の大学生活には何の支障もない」

だが───。

「時田の奴がたっぷりマージンを頂いてる、ってわけか」
話の分かった真島は、チッと舌打ちしてガシガシと乱暴にタバコの火を消した。

時田が会社に提出している報告書類は、何年にも渡り偽造されていた。
その手口は巧妙で、つい半年前まで誰も気が付かないでいた。
資材から調査費用に渡るまで綿密に工作され、それは取引先の業者までも巻き込んで隠蔽されていたのだ。

そしてその大半は、大型の建設計画を狙って実行されていた。
大量に買い上げられる何百という物件の中に、ひっそりと紛れ込まされているのだ。

今回の上総のケースと同じ手口で不当な買い上げを繰り返しながら、時田は私服を肥やしていた。

秘密裏に社命を受けた野崎と真島は、今回のマンション開発を利用して時田の悪事を暴こうとしていたのだ。


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