星空に触れて-64-

「話すんだ。何があった?」
野崎は上総の肩をがっちりと掴んで、まるで罪人を捕らえるようにしている。
それでいて、その顔が上総と同じくらい辛そうにしているのはどういう意味か分からない。

「黙ってないで、話すんだ!」
焦れた野崎は、片方の手で上総の頬をつかんでさらに凄む。

今さら、何が聞きたいんですかっ・・・。

残された勇気の最後の一滴を搾り出して、野崎をキッと見据える。

「最初からっ・・・」
うまく声にもならない。
「最初からっ、そう言えば良かったのにっ・・・っく。最初から言えば・・・、っく、良かったじゃないですかぁっ・・・っんっ」
涙がドクドクと流れ出て、噴出す嗚咽が言葉を乱す。


お前の土地を買収したいのだと、言ってしまえば済む話だ。
敢えて時間を掛けて、愉しんでいたのか?

いつもの大人の余裕で、上総の反応を面白がっていただけなのか?
バイト先まで何ヶ月も通ってきて、ささやかな幸せを失っていく様子を眺めていたのか?

なんて性質が悪いんだろう。
どうしてそんな酷いことができるんだ。

『仕事だと割り切れば、どんなことでもやってしまうような、そんな人なんですか?』
一人、沸騰する頭の中で問いただして、上総は野崎の腕の強さを感じていた。

野崎に言いたいことがあふれ出してくる一方で、力ない自分が惨めで情けなくて仕方ない。
目の前には家族の幸せを握りつぶそうとしている人間が居るというのに、
腕力でも言葉でも迫力でも負けてしまっている。

もう何も聞かなくていい、全ては繋がった。

「分かったからっ、ぇっぐ、離してっ!」
混乱気味に叫んだのと同時に、ドアをノックする音がした。

野崎は上総に向かってため息をつくと、吐き捨てるようにドアに返事をする。

「───誰だ」
「真島さんがいらっしゃいました。緊急だそうです。」
野崎はその名前にチッと舌打ちする。
「5分後に通せ」
そう言って下がらせる。

「かしこまりました」
受付の女性はさっと返事をして、その足音が遠ざかる。

それと同時に肩を抑える力が少しだけ緩んで、その隙に思いきり腕を振り切った。
野崎が身体のバランスを崩す。

「もう関わらないで!」
ぐしゃぐしゃになった顔を拭いて言い捨てて、勢いよくドアへ走り出した。

もう聞きたくない、聞きたくないっっ!

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