星空に触れてー58-

続けたかったな・・・。

仕事を覚えるまでは何かと大変だったけれど、
それ以上に上総にとってフロートはとても魅力的な場所だった。

ぼんやりと思いながら、とぼとぼと大学の門の近くまで来たところで
車のクラクションに呼び止められる。

鳴ったほうを振り返ると、見慣れた車が止まっていた。

聡示さん!

ウィンカーを点けて車を寄せた野崎が、運転席から軽く手を上げる。
上総は嬉しくてびっくりして、小走りに車に駆け寄った。

「どうしたんですか、こんなところで?」
ついさっきまで暗くじめっとした気分でいたのに。

野崎の顔を見ただけでここまで気分が晴れてしまう現金な自分に
心の中で苦笑する。

「仕事の帰りなんだよ。これからバイト?」
助手席の窓がおりて、野崎の優しい眼差しが迎えてくれる。
それだけで、とても穏やかな気持ちになってくるから不思議だ。

「今日は、お休みしました」
理由を話すと長くなりそうなので、事実だけを伝える。

「そうっか。だったら、これからちょっといい?見せたいものがあるんだ」
野崎はそう言って、助手席のロックを解除した。
上総が乗ることを疑っていないのか、助手席に置いてあった書類を後部座席へ移動させる。

大学へ話をしないといけないけど・・・。

わざわざバイトを休んだのにどうかと思ったけれど、それでも野崎に会えた喜びのほうがずっと上だった。
ショックなことが立て続けに起こったせいか、今は野崎に甘えていたい気がしてしまう。

「大丈夫ですよ」
そう言って、上総は静かに助手席へ乗り込んだ。





 車は20分ほど走って、やがて大きなビルの地下へ入っていった。

「このビルに事務所がある。たいていここで仕事してるんだ」
野崎は上総を連れ立ってエレベーターに乗ると、ビルの最上階を押した。

「大学からそんなに遠くないんですね」
意外な偶然に感心していると、

「運命だと、思わない?」

にっこり笑った野崎の左手が上総の髪を梳いていく。
その手はやがて頬に添えられて、その指先はそのまま滑り落ちて唇を何度か撫でていった。

聡示さんっ・・・

「ぁ、ッ・・・」
ぴくんと体をふるわせながら 上総がしどろもどろになっていると、エレベーターが小さな到着を告げた。

「着いちゃった」
野崎は残念そうに言って、何も無かったように すたすたとエレベーターを降りていく。

人が乗ってきたら大変だよ・・・。

上総は髪や服を意味も無く直しながら、慌てて野崎の後を追いかけた。

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