星空に触れて-55-

その日の夕方、祖母が夕飯の支度を始めた頃に来客があった。
品のいいグレーのスーツを着た三十代後半くらいの男は、
黒いスーツを着た体格のいい三十代と思われる男を二人連れていた。

「突然すみません。私はこういうものでして───」
名刺を出した男は時田と名乗った。

「実は今度、この辺りにマンションを建設する計画がありまして。
この辺りは通勤に便利で緑が多く環境もいい。まだ開発されていない土地が随分と残っている。
これほど条件の良い土地はそうそうありません。」
そういって男は、パンフレットを差し出した。
そこにはマンションの完成予想図が印刷されていて、金額や敷地面積まで詳細に設定されていた。

「そこで・・・。大変申し上げにくいのですが、こちらのお宅が我々のマンションの建設予定地に食い込んでおりまして、是非ともお宅の土地を買い上げさせて頂きたいと思っている次第です」

そういうと、男は鞄から見積書と打たれた書類を取り出した。

「僭越ながら、こちらでお見積もりを作成して参りました。
これから人気が出てくるにしても、今の段階ではこれが限度かと思われます」

男は見積書を祖母の前にさしだして、確認するように言った。

提示された金額では、土地を売ったところで新しい家を購入するにはまだまだ額が足らない。
年老いた老人二人では借金もできないというのに、あまりにも一方的な言い方だった。

「突然こんなことを言われても困ります。第一この額では新しい家も見つけようがありません」
祖母は差し出された見積書を突き返した。

「そう言われましても、この金額は調査結果としては適正な価格ですので。
どちらにしても計画は既に動き出しております。この秋には渡して頂かないと───」

男が言うのと同時に、後ろに控えていた恰幅のいい男二人が怖い形相をして
勢いよく玄関の上がり淵まで乗り上げてきた。

それに驚いた祖母は、男二人の勢いに押されるようにそのまま後ろにつんのめる格好になり、
足がもつれて倒れてしまった。


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