星空に触れて-53-

「えっ、それ本当なの?」
野崎が大きく身を乗り出してくる。

「もうこんなに大きくなっちゃってるんですけど」
誕生日を祝うような歳でもないので、と上総は苦笑してみせる。
「そんな大事なこと、先に言ってくれなきゃ。
 もう日がないのに、うっかり通り過ぎるところだった。そんなに特別な日があるのに───」

野崎は慌てて手帳を取り出すと、ぱらぱらとスケジュールを確認した。
行ったりきたり、何度もページを捲っては少し考える。

「大丈夫、決まり。デートは来週の金曜日。いいよね?」
そういうと、野崎は手帳をしまって上総の髪を梳いていく。
「大丈夫です。午前中は行くところがあるんですけど午後は空いてます。」
「あれ、大学とバイトは?」
野崎が不思議そうに聞いてくる。
「毎年、この日は休んでるんです。午後は何もしてませんから」
曖昧に笑う上総に、野崎はそれ以上何も聞かない。
「そうっか。じゃ、金曜日迎えに来るから。時間はあとでメールするよ」
「はい」

こんな会話ができるようになるとは思っていなかった。

野崎は恋人。
そのフレーズを上総は何度も心の中で繰り返した。
どんなに仲の良い友達にだって家族にだって言えないけれど。
上総の心はもう走り出してしまっている。

「店にも顔を出すから」
野崎の声はいつでも優しい。

「はい、待ってます」
優しいから、別れ際は同じくらい寂しくなる。

「じゃ・・・僕帰ります」
ただの客だった時でさえ、野崎が返るときは寂しかった。
今は寂しくて少しせつない。
「おやすみなさい」
そういって、上総は静かに車を降りた。
ウィンドウが下げられて、運転席から野崎が顔を覗かせる。

「おやすみ。気をつけてね」
短く告げて、野崎は車を走らせた。

徐々に加速した野崎の車は、やがて車の流れに吸い込まれて見えなくなった。

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Posted at 2009.05.24 (13:44) by () | [編集]
>秘コメのMさま
おぉ! コメントありがとうございますっ☆
>初デート終わりましたね。ひとことで言って「うっとり」です。
おぉぉぉ・・・! そのようなお言葉を頂いてしまってもいいのでしょうか・・ (感涙) m(;▽;)m
>デートの始めから終わりまで完璧に素敵です。
本当ですか?本当にそう思って頂けますか?あぁ・・なんと嬉しいことでしょう・・・
上総が恋心を認める大事な場面なので、そう思って頂けるとすごく嬉しいです!!
>でも多分飽きない。野崎さんの全ての仕草と台詞萌えです。
もうそのお言葉だけで・・・今日は白いご飯を3合食べられそうです!>▽<

VIVA野崎!読者様との出会いをありがとうw
またお時間のある時に、どしどし遊びに来てやってください!
Posted at 2009.05.24 (15:12) by 冬実 (URL) | [編集]
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