星空に触れて-51-

♪ピピッピピピピッ
突然、野崎の胸元から携帯の着信音が鳴り響いた。

「ぁっ・・・」
野崎の優しいキスにうっとり身を預けていた上総は、慌てて野崎の胸に両手をついて身を引いた。
ふわふわと雲の上を歩いていたところからいきなり地面へ戻されてしまって、うまく思考が切り替えられない。

今の今まで野崎に可愛がられていた唇は湿らされていて、空気に触れてひんやりとする。

「メール、かな」
野崎は上総の柔らかい髪の毛に絡ませていた左手を肩まで下ろして抱き寄せながら、右手でジャケットの内ポケットを探った。
「電源なんて、入れておくんじゃなかった」
野崎は苦笑しながら液晶画面を確認すると、今度は本当に電源を切って、携帯電話を後部座席へ放り投げた。

「あの・・・、お仕事じゃないんですか?」
気になって、上総は放られた携帯電話のほうを見た。
「今は、キスしたい」
野崎が右の人差し指で上総の唇に触れてくる。
野崎の唇の感触を思い出して、どきっとした。

僕だって・・・、僕だって。

「でも・・・、あの、そろそろ時間・・・」
ふと目に入った車の時計は11時を過ぎていた。
今の時間なら、まだ今日中に家に着ける。
・・・・・・祖父母を心配させることは、したくない。

「もう、こんな時間か・・・」
残念そうにいいながら、野崎はもう一度両腕で上総を抱き寄せた。

「でも───、とっても素敵な夜になった・・・」

野崎は上総の首すじに頬を摺り寄せた。
唇がかすかに首に触れて、思わずぎゅっと目を瞑る。

「今日からは、僕達は恋人同士」
野崎の声が、上総の体中にそれを刻印するように広がっていく。
「これからは、この髪も目も唇もぜんぶ、誰にも触れさせてはいけないからね。僕だけが触れていい。忘れないで・・・」
抱きしめられながら、上総は大好きな野崎の声を聞いていた。

今日からは恋人同士。
野崎は恋人。

上総は体中が温かく満たされて、野崎のことも温かくしてあげたくて、そっと抱きしめ返した。


「僕の名前、呼んでみて」
抱きしめあったまま、野崎が囁いた。

恋人同士の間だけ、二人でいるときにだけ許される───。

「─── 聡示さん」
上総は大切に、その名前を呼んだ。
抱きしめられる腕の力が少しだけ強くなる。

「そう・・・二人でいるときは、そう呼んで」
そう言って、野崎は上総の耳に触れるだけのキスをする。
「っぁ・・・」
触れた場所からむずむずとする電流が駆け抜けて、よく分からない感触に思わず声が出てしまった。
言った後で恥ずかしくなって、上総は俯いて体を強張らせる。
「本当に君は・・・」
クスリ、と耳元で笑った野崎は
「本当に、可愛いよ」
そう言ってしばらく上総の身体を抱きしめていた。


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