星空に触れて-42-

きっと野崎は、上総をただ慌てさせて楽しんでいたわけではない。
現に上総は、頑なにしていた最初の頃が嘘のように野崎の存在を受け入れてしまっている。

会話の端々でふいに見せられる深い眼差しや、風のいたずらのように触れてくる指先は、
その度ごとに上総に何かを気づかせようとしていたのだ。

過ぎてみれば何事も無かったかのように記憶の底に定着しているけれど、
野崎はそれを、時間を掛けて大きく育てて、
本人の知らないうちに上総をその意識の底から包み込もうとしている。

さっきの野崎の言葉に驚かなかったのは、それは・・・。

野崎の言葉が分かっていたからじゃない。
予想していたと勘違いしてしまったのは、どこかでそんなことを考えた痕跡があるからだ。

上総は気持ちを落ち着けたくて深く息をした。

気付いてはいけなかったような気が、する。
少しずつ視界が開けていく感覚に焦っている。
鼓動が、早い───。


上総は両頬の辺りに熱が集まってくるのを感じた。

最初に・・・、最初に話をした時からかもしれない。
あの時から僕は、野崎さんが来てくれるのが楽しみだった。

窓際のあの席に、知らずに目をやる自分を知っている。
あの笑顔と優しい眼差しが、自分だけに向けられていることを嬉しく思う気持ちを覚えている。

でも、でもこの思いは・・・。

何かを掴めそうな気がする。
それなのに、すぐに手にとって確かめたいと思いながらも、
掴んでしまうことを怖がっている自分がいる。

悩ましい思いを抱いたままの上総は、答えを探して野崎を見つめた。

「ドライブしようか。まだ、時間があるからね」
そういってウェイトレスを呼ぶと、席を立つ準備を始めた。

Leave a comment

Private :

Comments

- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -
12 02