星空に触れて-41-

「今どき、ではないですけど・・・」
上総は苦笑してドリンクを飲み干した。

自分でも自覚があった。
決して今どきの大学生ではない自分。
目新しい服を着て、どきどきするような楽しいことを探すために 街中を歩き回るようなことは、
自分にはできない。

「君は君。それだけのことさ」
そう言って野崎もドリンクを空にした。
その声に、上総は初めて淹れたあの一杯に『美味しい』と言ってくれた声をなぜか重ねてしまっていた。

「野崎さんがそう言ってくれると、なんだか僕も捨てたものじゃない気がします。自分でも不思議、なんですけど。」
誰でもない自分の存在を認めてもらっているようで嬉しくて、上総は照笑いをした。
野崎の前ではありのままの自分でいられる気がして、そんなことを勝手に思っているのにも、
くすぐったい気持ちになる。

本人も知らないうちに、上総の態度はすっかりほぐれてしまっていた。
いつもなら、家族の前でしか見せないような、幼い素顔まで 混じってしまうくらいに・・・。

こうやって話をしているのは、楽しい。
無理に格好をつけないでいられる野崎の側は、居心地がいい ───。

野崎はそんな上総を見つめたまま何も言わない。
「野崎さん?」
照れくさくて自分ばかりが決まりが悪いのに、黙っていないで何か言ってほしい。

「僕のことが、好きになった?」
野崎の声が、急速に深さを増す。

「またそうやって・・・、野崎さん・・・」

言った後で、上総は奇妙な感覚にとらわれた。

何だろう・・・。
いま、野崎さんの言葉を、予想していた気がする・・・。

どきりとさせられたけれど、いつものように驚かなかった。

どうして・・・。


絶対に、そんなはずはないのに、上総は野崎がそう言うのが分かっていたような感じがした。
これまでとは、明らかに何かが違う。
はっきりと、上総の中で反応するものがある。

「違ったかな?」
野崎の声は、遠くのほうで響いていた。


野崎がこうやってからかうようなことをする真意が、ちらりと見え隠れする気がした。

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