星空に触れて-3-

「そうか、なるほど。そういやこいつ、槙ちゃんそっくりだ。」
ニヤリ、と笑った黒田が顔だけ上総に向けて、焼き上がりの近いワッフルを指差しながら言った。

「え?僕ですか?」
意味が良く分からない、と、気の抜けた表情で上総が黒田を振り返ると、向かいのカウンターから声がする。

「そうそう、槙ちゃんとワッフルは本当によく似ているよ。」
カウンターの右端から4つめにいつも腰掛けている、常連の通称『ハンチングさん』である。いつもハンチング帽を被っていて、黒田ともよく話をするほどの顔なじみだ。

「僕、そんなこんがりしてないですよね…。」
どうしてだろう?と上総が視線を宙に巡らせていると、ハンチングさんがクスリ、と笑った。

「あー。笑いましたね?教えてくださいよ、どこか似ていますか?」
上総も少しだけ笑いながらハンチングさんに目線を向けると、今度はハンチングさんの隣に座っていた、こちらは通称『ポールさん』から答えがくる。

「槙村君の存在そのものがワッフルのようだ、ということでしょうなぁ。」
その風貌に合った優しい語り口でポールさんがにっこりと笑いかける。いつもアスコット・タイにジャケット姿で身奇麗な格好をしていて、ステッキを持ち歩いている様子が英国紳士のようだから、という安易な理由で、ありがちな『ポール』が採用されている。見た目では60歳くらいだろうか。

「存在が、ですかぁ…。」
うーん、と唸りながら上総は黒田の手元のワッフルに体ごと向き直る。

「温かくて、優しそうで。槙村君からは、見ている者の心にじんと染み渡る、柔らかい春の日差しのようなオーラがいつも伝わってきますからね。弱った心には槙村君が一番効きそうです。」
『嘘ではありませんよ』 と念を押しているような とびきりの笑顔をこちらに向けた後で、ポールさんは黒田に声を掛ける。

「そうでしょう、マスター?」
声を掛けられた黒田は、またニヤリと一瞬だけ格好のいい笑顔を作って上総を振り返った。

「確かに。よし、4つ上がり。槙ちゃん、頼む。」
ちょうど今焼きあがったワッフルはもう皿に盛り付けられていて、手元にあった伝票の控えが上総に渡される。

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Posted at 2009.05.24 (00:30) by () | [編集]
>秘コメのMさま
毎度 おはこびありがとうございます!
> 上総ちゃんをワッフルに例えているのがピッタリでした。
そういえば、「星空~」は お腹がすいてる時に書くと辛かった記憶があります。
食べたくなるんですよ、メイプルワッフル(笑w)


誤字の発見もありがとうございます!ご一報頂けると助かります☆
いや・・・ 他にもきっとあるんですよ、冬実の恥じを晒している箇所がそこらじゅうに・・・
あぁ・・・恐ろしい・・・・(涙)
Posted at 2009.05.24 (03:17) by 冬実 (URL) | [編集]
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