星空に触れて-32-

約束どおり8時にバイトを切り上げると、店の外にはすでに野崎が待っていた。

「あ、すみません。僕遅れました?」
大人を待たせてしまっては失礼になると思って、上総は咄嗟に謝った。

「ううん、8時ちょうど」
野崎がクスリと笑って助手席のドアを開ける。
「気をつけて」
そうして乗り込もうとする上総に優しく声を掛けた。
上総の体が助手席にすっぽりと埋まったところで、慎重にドアが閉められる。

こういうこと・・・、慣れてるんだなぁ。・・・大人だし。

今まで気にした事なかったけど、ハンサムさんってどういう人なんだろう。
仕事の話なんて聞いたことなかったなぁ。


「お待たせ。お店は勝手に決めたけど。タイ料理、大丈夫?」
野崎は右手をハンドルに軽く掛けて上総のほうを振り向いた。
その姿に、見慣れない洗練された大人の野崎を感じて、上総は思わず見入ってしまった。
昼間見た時とは違うスーツを着ていて、なんだか少し・・・色っぽい気がする。

「えっと・・・」
タイ料理、だったっけ?
上総が頭の中でぐるぐると言葉を探していると、

「本当に君は…。困ったさん、だ」

そう言って、野崎の左手が上総の右の頬をサラっと掠めた。
そのひんやりした指先にドキリとして、上総は思わず身を縮める。

「大丈夫、です」
いつもとは違う狭い空間の中でどう対処したらよいのか分からずに、上総は何度も目をぱちぱちさせた。
相変わらず余裕たっぷりの野崎が少し笑って頷く。
「了解」
そうして、見惚れるほどきれいな動作で車を走らせた。


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