星空に触れて-29-

「あの・・・。やっぱり申し訳ないです、コーヒー一杯にご飯っていうのは・・・」

それでは結局、600円以上のお金を使わせていることになってしまう。
それに・・・。
まだご飯を食べるとか、そんな間柄ではないような 気がする。

「あの・・・、聞いてますか?」
ハンサムさんは上機嫌で、すでに手帳を開いてスケジュールを確認していた。

「あれ、今日は予定でもあるの?」
しれっとした顔をしている割に、視線ばかりは鋭く聞き返してくる。

「あのっ、あのっ、それだったら、一杯600円頂いて、それでナシっていうことでは、いけませんかっ・・・?」
600円のお返しにそれ以上のお金を使わせてしまうくらいなら、600円を素直にもらっておいた方がいい。

とにかく、これ以上話を大きくしてはいけない気がしてならない。

「せっかく美味しいものをタダで食べられるのに、気にしないでもらっておいたら?タダに、タダのお返しさ」
『もったいないよ?』 といいながら、ハンサムさんが手帳の1ページを破って、何かを書き始めた。

「でもっ、あのっ、今回はたまたま上手くいきましたけど、ただの素人の僕が淹れたんですし、マスターともそういうことになってますからっ・・・!」
野崎を止めようと何とか言葉を繋いだのに、
「あぁ・・・、確かにそうだった。マスターが言っているんだからお金は払えないな。やっぱりタダで飲んでかえるしかないか。それにはお礼を、ということで、今夜ね」
「そんな・・・っ」

大人って・・・大人って、大人って!!
何だよ、弱っちい自分!ハンサムさんは絶対に、弁護士か政治家の秘書か何かだ!

「それと・・・」
ハンサムさんが、左手で軽く手招きをする。
完敗して意気消沈した上総が腰を曲げて身を寄せると、
「マスターとの秘密の約束を破ってしまったし、新しい秘密の交換をしよう」
ハンサムさんは、すごく楽しそうに言って声を潜めた。

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