今夜、資料室で-59-

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「裕紀・・、裕紀・・・っ」
滾った息を吹きつけて 忙しなくうなじの辺りに吸い付いてくる唇。
まるで うわ言のように 甲斐は何度も名前を呼び続けた。
鼻先を摺り寄せて 荒々しく真島の髪を掻き散らしながら、地肌の上まで吐息を吹きかけていく。
「裕紀っ・・」
益々深く抱きしめられる腕の強さに真島は眉を寄せた。
「・・・甲斐、さん・・」
忘我の勢いで体を寄せてくる 甲斐の真っ直ぐな熱が愛しくて、真島は甲斐の腕にそっと手を重ねた。
余裕のない甲斐の仕草1つに呼応するように、辛い別れをした瞬間の痛みが呼び覚まされていく。
身を焼かれる痛みを抱えていたのは 自分だけではなかったと、身体の髄まで知らされる。
「裕紀・・」
重ねた手を甲斐の左手が捕まえて、手のひらを合わせて深く指が絡ませられた。
甲斐を置き去りにした真島の行いを責めるように、赤く熱を持ってしびれだすほどに強く握られる。
そして ふっと力が抜けていったその後は、愛の言葉を囁きかけるように柔らかく包み込まれて指を合わされる。
何度 振り切っても すぐに追い付いて 強く握りなおしてくれる甲斐の手。
もう一度その手を取り戻した喜びに真島は心を震わせた。
───もう、ここしかない。
「甲斐さん・・・」
悲しく刻まれた真島の心の傷口は 甲斐の熱で瞬く間に溶かされていった。
跡形も無く均されたその後で、甲斐のひたむきな想いにくるまれながら無垢な細胞へと生まれ変わっていく。
寂しく開いた胸の空洞は甲斐の気配に隙無く埋められて、閉じた真島の瞳を喜びの涙が薄く覆った。
「裕紀・・・」
身体の奥へ、心の奥へ、じわり浸透する甲斐の声にも抱かれる心地がして、真島は淡く息を乱した。
捧げるように反らされた真島の身体を 甲斐が身体で受け止める。
甘えるように真島の髪に何度も額を擦りつけながら 切なく声を掠れさせた。
「裕紀、・・・キス」
拘束するように締め付けていた右手がそっと伸びてきて 唇をするりとなぞっていく。
優しい指の感触に、足先まで恋人に尽くされていた甘い記憶が呼び起こされる。
見つめ返しては応えられないその代わりに、許しを乞うように唇の上を何度も往復する甲斐の指先を、柔らかく唇で挟んで応えた。
「裕紀・・・っ」
引き剥がすように手を離されて スッと甲斐の気配が消えたと思った瞬間、唐突に膝裏を抱え上げられて、真島の身体は そのまま甲斐の腕に抱き上げられた。
「・・・ぇ、」
驚いた真島は咄嗟に目をつむった。
ふわりと浮いた真島の体は そのまま やわらかくベッドへ下ろされる。
「裕紀・・・」
額に一度だけ唇が触れると甲斐の体はどこかへ離れていって、やがて 足元の方から 足音と一緒にサーッとカーテンを引く音がやってくる。
陽の光は徐々に遮られて 明るい部屋は優しい暗がりに包まれた。

生ぬるい風が吹いてきて、閉じたカーテンを大きく膨らませて揺らしていく。

息苦しいほどの甲斐の視線に体を縛られながら、真島は熱い予感に赤らむ目元を腕で覆った。
脇から聞こえ始めた衣擦れの音に 掻き立てられる身体を持て余して、乱れる息を飲み込む。
やがて ギィとベッドが音を立てて、下着一枚になった甲斐の体に覆われた。

「甲斐さん・・・」
迷う事無く両腕を伸ばして真島は甲斐の背中を抱き寄せた。
ぴたりと重なる体を通して互いの鼓動が行き来する。
「裕紀・・・」
熱い吐息を吐き出しながら 真島の額に額を重ねて、甲斐は真島のパジャマに手を掛けた。
逸る手つきで慌しくボタンを外していく。
そして最後の1つを外して合わせ目を大きく左右へ開かせると、待ちかねたように滑らかな肌の上に乗り上げた。
「・・・ァ、」
胸と胸とがしっとりと触れる素肌の感触に真島の口からため息が漏れた。
細胞の1つまでもが甲斐の気配にざわめきだす。
「何度 君がいなくなっても、私は決して君を一人にはしておかない」
胸苦しいほどに枯れた声で囁きながら、甲斐は腕を伸ばして真島の下衣を引き下ろした。
足の間に自らの体を埋めて 熱の在り処を知らしめるように押し付ける。
「・・・ン、っ・・・」
淡い刺激に小さく体を震わせた真島の腕を、甲斐は静かに引き下ろした。
片側だけを優しく結び合わせて瞼の上に何度もキスを落とす。
「望んでくれ、裕紀・・・、もう何があっても、この手を離すな」
「・・・甲斐、ッ・・・」
答えようとした真島の声はくちづけと共に甲斐の唇へ吸い込まれた。
もどかしく体を捩りながら互いの下衣を剥いでいく。
皮膚一枚の隔たりでさえ惜しむように抱きしめ合いながら、二人は狂おしい熱に身を落としていった。





大きく膨らんだカーテンから眩い夏の陽が差し込んで二人の体が明々と照らされる。
うっすら汗の滲む体を甲斐の胸に凭せ掛けて、真島は熱が引いていくのを待っていた。
腰に巻きつけられた甲斐の腕にも小さい汗の粒が光る。

「・・・甲斐さん、・・・ごめん・・・」
少しだけ体を後ろへ向けて、真島は甲斐の喉元へ額を押し付けた。
甲斐の腕が応えるように真島の腰をやんわり締め付ける。
閉じ込めるように真島の背を体で覆いながら、甲斐は真島の髪に頬を寄せた。
「あんな事は・・・、もう二度とするんじゃない」
ゆるゆると、小さい子供に言い聞かせるように体を揺らす。
「ごめん・・・」
悲しく声を絞った甲斐の腕を抱きしめるように腕を添えて、真島は背中を摺り寄せた。
汗が滲む二人の身体を、甲斐は更に密着させる。
「・・・あんな姿は、二度と見せるんじゃない」
激しく畳を打ち付けていた甲斐の姿を思い出して、小さく息が引き攣れる。
甲斐の腕にくるまれる安らぎを感じながら思い返す痛みは、ひどく切なかった。
胸を裂かれる痛みがぶり返して、真島は甲斐の腕に爪を立てた。
真島の爪に食い込む程に跡を付けられながら、甲斐は柔らかいくちづけを真島の髪に落とし続ける。
そうして真島を抱きしめる腕にさらに力がこめられた。

「・・・何があっても、二度とこの手を 離すな」
心の奥へ刻み付けるように囁く甲斐の腕を真島は身を縮めて抱きしめた。
肩が、小さく震え始める。
息を殺した真島の身体は甲斐に優しく覆われて、吹き付ける風に柔らかく撫でられていった。

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Comments

拍手コメくださいったL様
コメありあとうございます、冬実でございます。
>ゆっくり、丁寧に読ませていただきました。素敵です…。
温かいコメントをありがとうございます!
目を覚ました真島君を見たら、甲斐さんも思いを遂げずにはいられなかったようです(照)。
Posted at 2010.07.13 (17:35) by 冬実 (URL) | [編集]
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