今夜、資料室で-46-

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『あぁ、ちょっと仕事の事で個人的に相談したい事があって・・・』

甲斐の自宅。
駆けつけた3人に見守られながら、甲斐は電話先の人間と交渉を繰り返していた。
火急の用とは言いながらもその詳細は絶対に明かせない。
突き上げる焦りと必死に戦いながら、甲斐は慎重に言葉を選んでいた。
真島へ繋がる僅かな光だけを信じて、遠回りな会話を延々続ける。
『野崎君に会う予定だったんだが、うっかり連絡先を聞くのを忘れて・・・、あぁ』
息の詰まるような切迫感の中で、甲斐は自分が何を告げているのかも分からなかった。
ただ、浮かんでくるのは真島の姿。
真島の声、
真島の匂い、
どんな時も美しい恋人の・・・温もり。

1つ消えては次を思い出して。
そうして、いくつ思い返したか分からない真島の姿に思いを馳せた頃、相手はようやく

【・・・まぁ・・・、甲斐さんがそうまで仰るなら・・・】
『本当かいっ?』
上ずった声で甲斐が告げると、取り囲んでいた3人がパっと目を輝かせた。

【できれば野崎君には後で甲斐さんから・・・】
『ああ、もちろん、もちろんだ。君には決して迷惑は掛けないから。安心してくれ』
甲斐は慌ててメモを取った。
書かれた数字を確認した3人は、手を叩いて飛び上がった。
【まさか甲斐さんがどうにかするなんて思っていませんが、念の為に・・・】
『ありがとう、本当に助かった。どうしても今日のうちに連絡を取っておきたかったから』
重ね重ねの礼を言って、甲斐は急いで電話を切った。

「甲斐さんっ!」
甲斐の腕に飛びついた水元の目は 希望を見つけて大きく見開かれていた。
「ああ、分かった」
頷いて、甲斐は野崎の連絡先が書かれたメモを3人へかざして見せた。
それを確認した穂波とマリちゃんは声にならない歓喜の声を上げる。

飛び上がる二人を他所に、水元は更に甲斐へ詰め寄った。
「早く、甲斐さん、早くしないとっ」
今日のフライトでシンガポールへ飛び立つ野崎。
機上の人になってからでは、何もかもが手遅れになってしまう。
「ああ、分かった」
汗ばんでもたつく指先を宥めすかしながら、甲斐はその番号へコールした。
これで、真島へ繋がる道が開かれるのだと信じて。

・・・しかし。

電話の先、期待した呼び出し音は鳴らなかった。
通話中と同じ電子音が垂れ流しで繰り返されてしまう。
掛けては切ってを何度も繰り返すうち、甲斐の息は苛立ちを含んで荒くなった。
それを見ていた3人も、徐々に不安を募らせる。
「・・・もしかして・・・、登録してない番号は拒否してるんじゃないでしょうか・・・」
細る声を震わせながら遠慮がちに穂波が言った。
「そんな・・・、だって野崎さんが登録してる番号の人なんて、どうやってっ・・」
はっきりと分かる悲壮感を漂わせて、マリちゃんが穂波の手を取った。

もしも穂波が言うように野崎が制限を掛けているのなら、まずその誰かを探し出して、
こちらの代わりに野崎へ連絡を取ってもらうしかない。
けれどそれは、あまりにも非現実的な策。

事情も話せないデリケートなこの状況で、人選を誤ったらとんでもない事になってしまう。
今すぐ確実に連絡が取れて、事の詳細には何も触れず、一切他言もせずに、間違いなく動いてくれる、誰か・・・。
それでいて、こちらも全幅の信頼がおけるような人物であれば、更に申し分ない。
考えれば考えるほどに、人選の基準は厳しい・・・。
仕事の付き合いでしかない4人は互いに目を見合わせて、苦い表情で思案に暮れた。

「野崎さんの知ってる人なんて・・」
マリちゃんは忙しなく四方へ視線をやりながら、少ない人脈に思考を集中させた。
「私達以外で、誰か野崎さんに・・・」
穂波も同じようにつぶやいて、夫やその仲間内の顔を思い返していく。
そして甲斐も水元も、少ない可能性の糸口を探して記憶の中を漁り始めた。
法務の人間ではややこしくなってしまう。
せめて野崎の同僚とは言っても、他の部署に気心が知れた社員など、そう簡単には見つからない・・・。
もう、一刻の猶予も無いというのに。

「せめて・・・、真島さんと同じくらい、野崎さんと繋がりのある、人・・・」
穂波がぽつりと零したとき、

「あああ!!!」
水元の、歓声のような雄叫びが4人の間を貫いた。

突然のことに、3人は目を見開いて水元を振り返った。
「マっっ、マリっ、マリさんっ!!」
マリちゃんの肩を掴んだ水元は、パクパクと口を震わせていた。
「よ、よっ、よーへーさんっっ!!!」
「は・・?」
ガクガク肩をゆすられながら、マリちゃんは眉を寄せて首を傾げた。
「いっ、いいい、池上さんですよっっ!!!」
「っ・・」
そして記憶の糸が繋がったマリちゃんも、口を大きく開けて叫んだ。
「あああ!!!」
顔を見合わせて手を叩きあう二人に甲斐と穂波がにじり寄った。

「一人だけっっ、でっ、でも、池上さんならっ・・!!」
ほんとうに、たった一人だけの、一縷の望み。
けれど水元とマリちゃんは、確固たる自信を滲ませて他の二人の手を取った。







下唇を押し下げてできた隙間へ自らの唇を入り込ませて、仁科は真島の唇に吸い付いていった。
確かな唇の肉厚を感じると、奥底に潜んでいた情欲が体中からじわり滲み出す。
禁断の蜜を湛えて仁科を惑わせる真島の唇。
その味は、震い付いてしまうほどに魅惑的で甘美な罪の味。

「ン、ッ・・」
自らの唇で挟み込んだ真島の唇を、仁科は荒ぶる熱情のままに吸い上げた。
真島の唇は仁科が触れた側から腫れ上がって、仁科を更に挑発するように赤く濡れて光る。
ピチャッ、ピチャッ、と、まるで真島に知らしめるかのような、あからさまな音を立てながら、食んでいった。
触れるほどに狂わされていく真島の妖しい色香。
征服の欲求は否応なしに掻き立てられて、仁科のくちづけは容赦が無かった。
熱に急かされた仁科の唇は、真島の唇を内側から大きくめくりあげながら喰らい付く。
「・・ぅッ、」
吐息ごと奪われていく真島の顔に、直ぐに苦渋が満ちて広がった。
眉を寄せるその様子でさえ、仁科には媚薬のようだった。
「・・ぅっ」
性急で野生的な口づけから逃れようとするように、真島の腕が僅かに胸を押し上げた。
体を固く強張らせて両手で拳を握っている。
唇に唇を触れ合わせたままに、赤く熟れて色づいた真島の唇を仁科はようやく解放した。

高ぶった息を短く吐いて二人は肩で呼吸を繰り返す。
尚も魅惑的な真島の唇を、仁科は舌先で でろりと舐め上げた。
潤いを与えながら巻き取るように唇を食んで、最後に一度優しく吸いあげて、静かに離れる。

「・・・私を見るんだ」
もはや絶対者となった仁科の言葉に、真島はゆっくりと目を開けた。
近すぎる距離と荒々しい口付けの名残りで、視線は直ぐには合わされない。
顎を捕らえていた手を外して、仁科は人差し指を真島の唇の間へ差し込んだ。
「そのままだ・・・、私を見たまま、口を開けろ・・」
唇から唇へ直接振動を伝えながら言い放つ。
やや上向きの状態を保ったまま、真島の口は言われるがままに開かれた。
唇よりも更に艶やかな赤色をした舌がちらりと覗いて、仁科の劣情をぶわりと煽った。
潤む視線が絡み合って、更なる情欲に突き上げられる。
「絶対に目は閉じるな・・、良いと言うまで、そのままだ・・」
吐息を吹きつけながら命令を下す仁科に、真島は無言の同意を見せる。
口を開けたその悩ましい表情に、仁科はコクリと固唾を呑んだ。
そうして真島の唇に乗せていた人差し指を、開かれたその奥へゆっくりと差し入れる。
舌の感触を愉しむようにその上をすべらせて、指の中ほどまで差し込んだ。
「・・・目は、閉じるなよ」
再度の念を押してから、仁科は差し込んだ指に添わせるように、自らの舌をねじ込んでいった。



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