星空に触れて-23-

バターとメイプルシロップが焼けた甘い香りのするワッフルと、深煎りされたブラジル・サントスの一杯をトレイに乗せて、上総は緊張した面持ちで窓際の席に向かった。

「お待たせしました」
上総が席へ向かってくるのを見て片づけを始めていたハンサムさんは、タイミングよくテーブルの上を空けてくれている。

「来たね。槙村君推薦の一杯」
そういうと、ハンサムさんはトレイの上のカップに目をやった。
「ブラジル・サントスでございます」
上総はその一杯を、神妙な面持ちでテーブルへ置いた。

「ブラジル・サントスかぁ。ふーん」
ハンサムさんは身をかがめると、カップから漂う香りを吸い込んだ。
上総は、その様子を視界の脇のほうで伺う。

「それから、こちらは当店裏メニュー、メイプル・ワッフルでございます」
上総が皿を置くと、そこから一斉に甘く香ばしい香りが広がった。

「あ、これが例の。うん、・・・とてもいい香りがする」
笑顔でそう言いながら、ハンサムさんは上総を見上げた。
こちらは自信作なので上総も笑顔を返した。

「でもどうして、ワッフル?」
「ハンサムさん、疲れているんじゃないかと思ったんです。この店に来る人達は、そういう時によくこれを食べていて、それで、ハンサムさんも元気になるんじゃないかって、思ったから・・・」
ハンサムさんには、できればいつもあの優しい笑顔でいてほしい。
上総は少し気恥ずかしい思いで、ハンサムさんを見た。
「そうっか。ありがとう」
ハンサムさんはいつもの優しい目をして応えてくれる。

「確かに、これは元気になりそうだ。疲れているとね、つい甘いもの食べたくなるけど、男はどうしても、ね」
ハンサムさんは肩をすくめた。
「本当ですか?良かったです。もしかして、お腹いっぱいだったらどうしようって思ったんですけど、良かった!」
ハンサムさんの役に立てたような気がして、とても嬉しい気持ちになってしまう。
上総は上ずってしまいそうな声を抑えながら、心の中で飛び跳ねた。

こうやって、自分達が提供する一杯、一皿に、たくさんの人が安らぎを感じてくれる、
そのことがとても嬉しいと思う。

「でも、槙村君の笑顔が一番効きそうだ」
そういうと、ハンサムさんは真っ直ぐに上総を見上げた。

ハンサムさんの眼差しに気づいた上総は、思わずドキリとした。
先ほどの、注文を取りにに来た時のハンサムさんと同じ気配がして、自分の顔がみるみる赤くなっていくのを感じていた。

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