恋心の秘密-3-

暗い表情をしたままの上総をリビングに通して、野崎はいつもの場所で上総の肩を抱きよせた。

「少し前からなんです・・・」
思いつめた顔をした上総が、ぽつりぽつりと話始める。
「最初は本当に・・・家に帰らないといけないって、思ってたんです。2人には絶対に心配を掛けたくなくて。
 でも最近は・・・ そう思わなくなって、来たんです・・・・」

「・・・・・・僕、おかしいんです。家に帰っても、帰った気がしないんです・・・。
 でも、ここへ来て、聡示さんに逢ったら、帰ってきた気がするんです・・・」
「上総・・・」
上総の言葉に野崎は大きな衝撃を受けた。
これまでの態度からしてみても、そんな風に思ってくれているなんて、少しも感じられなかった。

「それに・・・。聡示さんに送ってもらって帰るとき・・・、最近 すごく・・・前よりずっと寂しくって・・・。
 もう家には帰らなくても良いって、ほんとに・・・ 思ってしまうんです・・・」
野崎は思わず上総の頬に手を添えて、顔を上げさせた。
「上総、そんな事・・・何も言わなかった・・・」
寂しそうに声を震わせながら紡がれた 上総の切ない言葉は、甘い痺れのような新しい衝撃を野崎に与えた。

「こんな事初めてなんです・・・。僕ずっと・・・ いつも家族が一番だったのに・・・。
お爺ちゃんとお婆ちゃんが一番で、それ以上に・・・大事なものなんて、無かったのに・・・。
僕、今は・・・聡示さんに逢える方が嬉しいんです・・・。家に帰るより、ここへ来る方が安心できるんです・・・」
「それって・・・ 上総・・・」

瞳を潤ませながら上総が言った言葉は・・・
それは野崎の存在が、あれほど大切にしている家族よりも大きくなってしまったのだという、心震わされる告白だった。

「でもそんな事を考えるのは・・・ すごく酷い事なんじゃないかって 思うんです。
僕を引き取って、あんなに大切にしてくれたお爺ちゃんとお婆ちゃんに、すごく酷い事をしてるんじゃないかって思って・・・。だって 酷いですよね・・・ 帰った気がしない、なんて・・・」
「上総・・・」
野崎の中にも思わず熱いものがこみ上げてきて、野崎は上総の体を引き寄せた。
・・・そんな思いを抱いてくれていたとは、思わなかった。

いつも上総の口から出てくる言葉は、心の中に秘めているうちの、ほんの一握り・・・。

「聡示さんに逢いに来たら・・・ 僕もう二度と家に帰らなくなるかもしれないって、本当に思ったんです・・・。
 だっていつも、帰りたくないから・・・。 聡示さんといる方が嬉しくて、ずっと・・・一緒にいたいって、思ってるから・・・」
野崎は両腕を巻きつけて 上総の体を力を込めて抱き留めた。
「上総、今までそんなこと一言も・・・」

それでも ほんの一握りのその言葉は、嘘偽りのない上総の真っ直ぐな心そのもので、
いつもいつも簡単に 野崎の心を浚ってしまう・・・。

「嘘じゃないんです・・・。本当にそうなったら僕・・・どうしたら良いか分からなくて・・・。
だから・・・・・・ 逢いに来るのは良くないんじゃないかって、思ったんです・・・」
「もう、いいから・・・」
「聡示さん、僕・・・どうしたら、いいですか・・・?」

上総は間違いなく自分と同じように深い想いを寄せてくれていた・・・。
・・・それ以上だったかもしれない。
それが分かった野崎の心は、抱き留めた上総の体温を吸い込むように温められていった。





       ◆=End=◆



ちょっとマジメな話を書いてみたくなったわけです(笑
3話で終了しちゃいました^^;

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Comments

拍手コメのmさま
2話の区切り方が区切り方だったので確かに緊迫したムード^^;
>再び『FINAL DISTANCE』が
>この二人が擦れ違い始めると私までオロオロ
そうなんですよね、本気ですれ違い始めると手の掛かる2人です(汗;

上総は実は手強いんですよね、その辺りにも気付いて頂いてありがとうございますw あの1室が埋まる(?)時のエピソードは、中編くらいにしないなって思ってます☆ その時は是非一緒に盛り上がってください!

いつも応援ポチありがとうございます!
(・・・・ガクガクブルブル、アワワワワ・・・・笑)
Posted at 2009.06.15 (11:50) by 冬実 (URL) | [編集]
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