シャワーの秘密(上総)

セキュリティを解除して上総がドアを開けると、野崎はもうリビングを出ていた。
「聡示さん」
「お帰り上総」

ドアを閉めたのを最後まで確認して急いで靴を脱いで。
大好きな優しい笑顔を見せてくれている恋人に駆け寄る。

「おいで」
あと1歩まで近づいたところで両腕を広げてくれるのもいつものことで、
そこへ踏み込んで広い胸にしがみついたところを抱き返してくれるのもいつものお決まり。

でも・・・

「上総、シャワー浴びよう」

これは・・・ どうしてなんだろう。

「え・・・?」

泊まっていく日もそうじゃない日も、帰ったらまずシャワーに入れられる。
髪も体もぜんぶ、申し訳ないくらいに丁寧に洗われてしまう。

何度かお願いしてみたけれど・・・ やっぱり自分では洗わせてもらえない。

もう夏は終わった。
夜はちょっと寒いくらいの風が吹いて、昼間は汗もかかなくなった。

それなのに・・・・・・
いつもいつもシャワーに入るのは、どうしてなんだろう・・・。

「上総?」

それがずっと気になっていて、シャワーへ誘われる時は、直ぐに良い返事をしたことがない。
そしてそんな態度を見ている恋人は・・・

「僕とシャワー入るの、嫌じゃないよね・・・?」

その度にすごく寂しそうな声を出しながら、不安気な表情で聞いて来る。

「嫌じゃ、ないです・・・」

本当に嫌じゃない。
すごく丁寧に優しくしてくれて、洗った後の髪まで乾かしてくれる。
だから、嫌じゃないんだけど・・・

「何もしない、約束する」

そんな自分の態度が たぶん 恋人を誤解させていて、
その度に寂しそうな顔をさせてしまって・・・ そんな事を言わせてしまう。


だから今日は、思い切って

「あの・・・ どうしていつもシャワーに入るんですか?」

・・・・・・ とうとう聞いてしまった。


少しだけ首をかしげた恋人はふわりと微笑んで、
「バスローブが着たいんだ」
と言った。

「バスローブ・・・?」

バスローブ・・・?
そんなに バスローブって・・・、 良い物?


コツリと額が合わせられて、ちょっぴり甘えん坊な声がした。
「二人きりで居る時は・・・ 全部 上総とオソロイがいい。別々なんて寂しい・・・ 」
そのまま鼻先にチュっと唇が触れてくる。
「ぇっ・・・」

おそろい・・・?

「1日中ずっと上総と離れ離れなのに、いつもほんの少ししか逢えないくて・・・・・・
 せめて二人で居るときは、何でも全部同じにして、ずっと 上総と同じ気分でいたい・・・・・・」

背中に回っていた腕がひとつ離れていって、顎が持ち上げられる。
穏やかで、深い色をしたきれいな目で見つめながら、恋人は優しいキスをしてくれる・・・。

「聡示さん・・・」

いつもいつも逢いたいのは・・・ 少しでも長く一緒に居たいと思っているのは、僕だって同じ・・・。

「なんでも全部 上総と一緒じゃないとイヤなんだ・・・。僕、おかしいのかな・・・?
上総は・・・ 僕と何でもオソロイにするのは・・・・・・ イヤ・・・・・・?」
頬をすり寄せながら少しだけスネたような声を出して、まるで子供のような仕草をする。

そんな・・・理由だったなんて・・・。
・・・ かわいい。

「イヤじゃないです。僕も・・・ 聡示さんとオソロイは 好きです・・・」
「ありがとう上総・・・ 愛してる」

最初から そう言ってくれたら良かったのにな・・・。
本当に・・・かわいい。

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