星空に触れて-19-

カウンターではいつもの2人と黒田が談笑をしていて、上総の帰りを待っていた。

「おや槙村君、何か楽しそうですね」
上総の足取りを見たポールさんが、面白いものでも見つけたように言う。
「分かりますか?ちょっと考え中なんです」
そう言って、上総は黒田の方へ寄って行った。

「あの、ハンサムさんが、僕に選んでくれって言うんです」
黒田は上総をちらっと見ると、口元だけ笑って見せた。

「ほう、槙ちゃんにおまかせか。なるほど」
「そりゃ面白い。さて、何がでるかね」
こういう遊びに目が無いハンチングさんが、すかさず脇から乗ってくる。

「それで、まだ時間間に合いますよね?ハンサムさん、なんだか疲れるみたいで。でもまだ仕事が残っているそうなんです。それで・・・、アレは、どうかなって・・・」

肝心の飲み物はまだ決められないのに、上総の頭にはずっと別のものが浮かんでいた。
柱時計を見ながら言うと、黒田も合点がいったように眉を少しだけ上げた。

「飲み物は、まだ考えているところなんですけど」
言ってはみたものの、本当は上総には少し躊躇いがあった。

口伝で広がった裏メニュー。
メニューに載せていないのは、注文できる人間をわざと選別しているようにも感じていた。
もしかしたら、彼に出すことを黒田に断わられてしまうかもしれない。
彼にはまだ早いと言われる事を考えると、上総は内心どきどきだった。

それでもそれが一番ぴったりな気がしていたので、恐る恐る黒田を見上げる。
「そういや、ハンサムの兄さんには、まだ出した事無かったなぁ」
柱時計を見ていた黒田は、上総の方へ視線を戻した。

「一枚、焼くとするか」
黒田はニヤリと笑って、上総の肩にぽんと手を乗せた。

「いいんですか?」
思わずパッと花が開いたように喜んだ上総に、黒田がはっきりと頷いて了承をくれる。

「そうだなぁ、豆は・・・。深めのやつだな」
そう言うと、黒田は濃い色に輝く豆の入った瓶が並べられた棚の前まで移動した。
その中の1つを指差して上総を見る。
「こいつでいいだろう」
上総は黒田が指差した瓶のラベルを見た。

「ブラジル・サントス・・・。いいですね。じゃぁ、これブレンドするんですか?」
「いや、ストレートだ」
そういうと、黒田は上総に次の段取りを伝えて、自らも次の準備に取り掛かった。

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