星空に触れて-おまけ-

野崎は上総が泣き止むまでずっと抱きしめていてくれた。
柔らかい声で 『上総』 と名前を呼びながら髪を梳いて、背中を何度も撫でてくれた。
その優しい感触が心地よくて、また涙が溢れてしまうのを何度も繰り返しながら、二人はしばらく玄関に座り込んでいた。

「もう・・・大丈夫です・・・」
ようやく涙の栓が閉まって、上総は落ち着いた呼吸ができるようになった。
「顔、洗ってくる?」
少しだけ腕の力を緩めた野崎が静かに聞いてくる。
上総は頷いて野崎の腕から抜けると、もう一度部屋に上がって洗面へ向かった。
じゃぶじゃぶと冷たい水で何度も洗って、手に掬った水でしばらく目を冷やした。
「大丈夫?」
後からついて来た野崎がタオルを渡してくれる。
「もう大丈夫です」
もらったタオルで顔を拭いて、上総は野崎に笑顔を向けた。
「よかった。悲しい涙じゃなくても泣いてるのは心配だからね」
顔を洗っているうちに髪まで濡らしてしまって、それを上総がタオルでがしがし拭いているところを野崎が後ろから抱きしめてくる。

「実は・・・上総に言っておかないといけないことがあるんだ・・・」
いつになく低い神妙な声で野崎がぽつりと言った。
「・・・どうか、したんですか・・・?」
何か二人の間に大変な問題でも起きてしまうのかと思って、上総はまた泣いてしまいそうな声で言った。
「上総が許してくれるかどうか分からなくて・・・言えなかったんだ・・・」
野崎の沈んだ声にいたたまれなくなって、上総は体を回して野崎を正面から見上げた。
「聡示さん・・・?」
上総は野崎の胸に手のひらを当てて、懸命に顔を覗き込んだ。
「僕は嘘をついてる」
野崎の言葉に、上総の身体がビクっと反応した。
「嘘・・・って・・・・」
悲しそうな顔をした上総の目に、また涙が少しずつ溜まってきた。


「 『おはようのキス』 なんだけど・・・」
「・・・・・・・・・ぇ?」
「あの話、実は嘘なんだよね」
「・・・・・・・・・」
「ほんとは 『おはようのキス』 はただの挨拶なんだ」
「・・・・・・ぇ・・・」
「だから、別にどちらがどちらにしてもいいし、軽くでもたくさんでも、どうやっても良いんだよね」
「・・・・・・ぇっ・・・?」
「上総からしないといけないこともないし、ちょっと触れる程度でも何も問題ないんだ」
「・・・えええっ?!・・・」
「ごめん」
「・・・・・・・・・・・・」
「ごめんね?上総、怒ってる?」
「・・・・・・・・・・・・」
「上総許して」
「・・・・・・・・・・・・」

「だって上総にキスして欲しかったんだ」
「・・・・・・・・・・・・」
「上総にキスして欲しいと思っちゃいけない?」
「・・・・・・・・・ぃぇ・・」
「だって上総からあんまりキスしてくれないから・・・」
「・・・・・・・・・ぁ・・・」
「すごく寂しくて辛かったんだ・・・」
「・・・・・・ぇと・・・」
「好きな子にキスしてもらえないって思ったら、すごく寂しくて辛くて・・・」
「・・・・・・あ、の・・・」
「どうしたら上総がキスしてくれるかいっぱい考えたんだ・・・すごく寂しくて・・・」
「・・・聡示・・・さん・・・」
「上総にキスしてもらえるなら、嘘ついて心が傷ついてしまってもいいって思った・・・」
「・・・そんなっ・・・・・・」
「たくさん上総にキスして欲しいんだ。だってこんなに好きなのに・・・」
「・・・聡示さん、僕・・・・・・」
「こんなに好きなのに・・・キスしてもらえないなんて。すごく寂しくて・・・」
「聡示さん・・・僕今までどおりで・・・いいです」

「・・・なに?」
「僕、今までどおりで・・・いいです」
「・・・なにが?」
「その・・・ 『おはようのキス』 は、今までどおりでいい、です・・・」
「今までどおりしてくれるの?」
「・・・はい」
「許してくれるの?」
「・・・はい」
「怒ってたんじゃない?」
「・・・でも・・・僕も・・・そう、思うから・・・」
「何を?」
「あの・・・好きな人には、キス・・・してほしい、って、僕も思います・・・」
「よかった上総が許してくれて。上総 愛してる」


(最後には必ず折れるのが上総)
(そういう風に仕向けるのが野崎)


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Posted at 2009.05.20 (13:44) by () | [編集]
>秘コメのMさま
おお!
コメント残して頂けるなんてありがとうございます!!

>このおまけエピソードでやられました。
お話を気に入って頂いて、やらててまで頂けるとは(笑w)
書いております冬実も身に余る光栄でございます!!

>策士野崎ステキ!
VIVA策士!そして健気な上総!食べられておしまい!
そこを気に入って頂けるのは、こういった嗜好を好んでおります私個人としてもウフフですw
これからもどうか、贔屓にしてやってくださいませ。
またのお越しをお待ちしております!!
Posted at 2009.05.20 (18:05) by 冬実 (URL) | [編集]
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