星空に触れて-12-

「そうか。じゃ、お言葉に甘えようかな」
そういってその人は、上総の目を見つめたままメニューを受け取った。

(えっ・・・)
一瞬、最初に会ったあのときのドキリとした感覚を思い出してしまい、上総は急速に高まっていく鼓動を感じずにはいられなかった。

「そういえば、槙ちゃん。このお兄さんには、まだあげてないんだろう?」
一人でおろおろしているところへ、ハンチングさんに呼びかけられて、上総は はたと我に返った。

「えっ?あ、そう、です。まだ、です」
たどたどしく応えながら、上総は黒田の脇に戻ってなんとか平静を取り戻そうとした。

「どうでしょうね、この方に」
ポールさんがその人に目を向けた。

「あの、もしかして噂に聞く『名札』のことですか?」
その人はもう名札のことを知っているようで、興味深そうにポールさんに聞き返した。

「ほぅ、ご存知でしたか。いや、あなたにもどうかと思いましてね。槙村君、どうですか?」
今度はポールさんが上総に振ってくる。

「あぁ、そうだ。確か、君が名前を付けているんだったよね」
その人も上総に視線を向けてきて、上総は返答に困ってしまう。
これまでは客の知らないところで黒田と勝手にやっていたことで、こういう展開で名前を付けたことはない。

上総はどうしたらよいか分からずに、隣の黒田を見上げた。
上総の視線を受けた黒田はしばらく考えているような顔をして、やがてゆっくりと手元の椅子を寄せて腰掛けた。

そしてニヤリといつもの笑顔を見せる。
「そうさな、男前なやつがいいかな」
と言いながら、上総に店の名前が入ったカードを一枚渡した。

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