星空に触れて-108-

深夜も2時を過ぎた頃。
時田を追い詰めるための計画の段取りが最後にもう一度確認された。

「今日はもう遅いから、これくらいにしましょう。槙村君も居ることだし」
真島が疲れの混じる声で言った。
「そうですね。我々も無茶のし過ぎです」
甲斐が大きな息をつきながら相槌を入れる。

「お前足が無いだろう?水元をお願いできますか?」
真島が水元を見た後で、はす向かいの藤堂に声を掛ける。
「ええ、通り道ですから。では水元君、車まで一緒に」
そう言うと藤堂は手早く資料を鞄に詰めて、水元を連れ立って早々に部屋を出て行った。

「じゃ、俺たちも帰るから。槙村君は聡示が送るよ。今日はありがとう」
きれいな笑顔で言って、真島はジャケットと鞄を取り上げた。
「あ、はい。ありがとうございました」
上総も礼を言う。

「それと・・・。よろしく。俺たちの勝手な言い分だっていうのは、分かってる。本来ならこっちで何とかして、君にはお詫びをしに行くのが筋なんだ。すまない。ただ、余裕がなくて、今はこれしか無かった」

「いえ、そんな・・・。僕だけでは、結局何もできませんでした。僕のほうこそ、よろしくお願いします」
上総は深々とお辞儀をした。

確かに、野崎や真島や他の3人は会社のためにやっているのだと思う。
時田のこれまでの悪事を暴いて、全て清算するためにずっと準備をしていた。
そこに便乗しようとしているのは、むしろ自分のほうなんじゃないかと思った。

今回のことで、あのメンバーが昼夜を問わずずっと動き回っていたのを、今日 知った。
真島も甲斐も藤堂も水元も、皆それぞれの立場で本当に真剣に事に当っている。
本当なら手も足も出ないはずの相手に、自分は今、労せず立ち向かうことができている。

「そう言ってくれると、こっちも気が楽になる。じゃ、またね」
最後にもう一度微笑んで、真島は甲斐と連れ立って出て行った。


皆が帰っていって、上総が思わず脱力していると・・・

「あ、忘れ物」
ドアの方から、真島の声がした。
少しだけ開けたドアの隙間から顔だけ覗かせると、ぐいっと腕を伸ばして、オフィスの明かりを全て落としてしまう。


「じゃ、今度こそバイバイ」
にんまりと声だけで笑って、真島は風のように去って行った。

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