星空に触れて-10-

悪い気は全くしなかった。
威厳を撒き散らして高圧的な態度を取るような人ではないと感じていたし、かといって、へらへらと媚びるようなところもない。
それどころか、自分とは違うあの恵まれた容姿には同性として憧れるし、時折 不意打ちのように見せられたあの笑顔も ドキリとはさせられたけれど、やはり上総にとっては良い印象の人だった、と記憶されていた。

「そういえばあの人には、名札はあげたんですか?」
いつかの記憶に思いを馳せていた上総は、ポールさんに話しかけられて、ぼーっとしてしまっていたことに気づく。

「あ、いえ。あの人にはまだですよ」
そういって上総が隣の黒田を見上げたとき、ドアのベルが鳴って人が入ってくる気配がした。

上総はいつものお決まりで、ドアへ向かって声を掛けようとした。


「いらっしゃいませ───あっ」
上総が終わりのほうで頓狂な声を出したせいで、つられて黒田とハンチングさん、ポールさんが入り口に目を向けた。

「おやまぁ」
とハンチングさんが半腰になる。

「ほうほう。なんとまぁ」
とはポールさん。

「おいでなすった」
ニヤリ、と口角を上げた黒田が続く。

「おどろき、ましたよね」
上総がその場にいた各々へ向かって声を掛けた。

それもそのはず。
ついさっきまで、皆で話していたその張本人がやって来たのだ。
そしてその人はというと、驚いた四人に一度に見られたせいで どうしたものかと困ったように佇んでいる。

(えっと・・・どうしたら・・・)

上総が考えを巡らせていると、
「どうぞ」
黒田が短くいって、カウンターを指した。

それに続くように、ハンチングさんとポールさんが『どうぞ、どうぞ』と笑みを浮かべる。

上総も笑顔を投げて、黒田と同じようにカウンターを勧めた。
「どうぞ」
上総の声が届いた頃、その人はようやくカウンターへ向かってきた。

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