星空に触れて-104-

今なら、野崎の全てを信じられる。
上総は野崎の言葉を待った。

「計画していたようには時間が掛けられなくなってしまった。迅速に解決するために、被害者側の証拠が必要になったんだ。気は進まないかもしれないけれど、協力してもらえないだろうか?」
野崎は落ち着いた眼差しで、真摯に言葉をつなげた。

上総は一度大きく息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出した。

「僕が・・・僕があの家を守れるかもしれない、っていうことですか・・・?」
上総は真っ直ぐに真島を見た。
「そういうことになる」
真島も真っ直ぐに上総に答える。
「分かりました。僕にできることがあるなら、やってみます。よろしくお願いします」
上総は、その場の全員に向けるように言った。

あの家を売らなくて済むかもしれない。
祖父母との思い出が詰まったあの場所を守れるのなら、迷いなんてあるはずがなかった。
大学を辞める痛みに比べれば、多少の苦労など今の上総には無いに等しいと思えた。

「ありがとう。じゃ、早速で申し訳ないんだけど、具体的な話を藤堂さんから話してもらうから」
真島がそういうと、藤堂は1つの封筒を上総に渡した。
「中を確認してみてください。あなたの身辺調査資料です」
落ち着き払った藤堂の言葉に絶句した。
「僕の・・・?」
何のために?一体誰が・・・?
上総は手先が冷たくなるのを感じながら、封筒の中身を取り出した。
「そんなっ・・・!」
本籍地や現住所に続けて記されている情報に唖然となった。
大学での成績、数少ない友人の名前とその素行、バイト先での様子や仕事内容と時給と黒田との関係。
父母との関係、祖父母へ引き取られた経緯、親戚づきあいの希薄さなど、上総自身も忘れていたような事まで面々と綴られていた。

「時田が調査を依頼したものと同じものです」
「こんなこと・・・」
「あなたがもし誰かに助けを求めるようなことがあれば、忽ち時田の知るところになっていたでしょう」
ゆっくりと頷きながら藤堂が言う。

上総は自分が向き合っている相手の恐ろしさを今更ながらに痛感した。
時田が組織的にここまで周到に策を講じていては、どんなに足掻いたところで勝ち目などあるはずも無かった。
「これが時田のやり方です。こうやって嫌なやり方で長い間私服を肥やしてきたんです。ですから、それ相応の痛い目を見てもらわなければ割に合いません。いいですか、時間がありません。これから私が説明することを、良く聞いてください――」

そう言って、藤堂は上総にその計画の段取りを説明した。

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